個人資産 を増やす観点から 株式会社 と 医療法人 の違いを知る
個人資産 を増やしたい、子供に資産を残したい と考える場合、自分の行っている事業の形態を正しく理解することはとても重要です。株式会社と医療法人、それぞれを経営する立場で、現在の制度や数字を交えながら「何を知っておくべきか」をまとめてみました。

Contents
基本的な仕組みの違い
法人の設立手続きと運営の違い
株式会社は会社法に基づいて設立され、設立の自由度が高い一方、医療法人は医療法に基づくため、都道府県知事の認可が必要で厳格なルールが課されます。例えば、株式会社なら比較的短期間で設立可能ですが、医療法人では半年以上かかることもあります。
株式会社 vs 医療法人
医療法人は「医業を行うこと」を目的としているため、営利性が強く制限されています。つまり、株式会社では配当や株主還元を柔軟に行えますが、医療法人では余剰金を自由に分配できません。また、一般的には医療法人の理事長は医師である必要があるため、子供が医師でない場合には、子供に承継するのは困難です。
| 項目 | 株式会社 | 医療法人 |
|---|---|---|
| 法人格の性格 | 営利法人(利益追求が目的) | 非営利法人(利益分配は不可) |
| 役職者 | 代表取締役、取締役、監査役など | 理事長、理事、監事 |
| 出資者・所有権 | 株主が出資し、会社の所有権を持つ | 出資という概念がない(基金制度あり) |
| 利益の分配 | 配当可能 | 配当不可(法人内留保のみ) |
| 承継 | 株式を売却・譲渡できる | 財産は個人のものではなく、承継は法人単位で調整が必要 |
税制上の違い・留意点
課税の仕組みと税率
株式会社は法人税が適用され、利益に対しておおむね23.2%の法人税が課されます。一方、医療法人は持分なし医療法人であれば法人税がかかりますが、特定医療法人として認定されると一定の軽減措置が受けられる場合もあります。また、医療法人における社会保険診療報酬は原則非課税という特徴もあります。
株式会社 vs 医療法人
| 項目 | 株式会社 | 医療法人 |
|---|---|---|
| 法人税率 | 約23.2%(中小法人は一部軽減あり) | 同様。 |
| 利益の個人取り出し | 給与、配当、貸付金返済など | 給与のみ(利益配当は不可) |
| 退職金 | 支給可能。節税策として活用されやすい | 支給可能。退職金規程が必須 |
| 節税スキーム | 多様(オーナー貸付・不動産活用・保険) | 制限が多い。不動産保有制限もあり |
| 法人保険 | 節税保険を活用しやすい | 制限が厳しく、損金算入が難しい |
| 医療収入課税 | 非課税の制度なし(普通に課税対象) | 社会保険診療報酬は原則非課税(ただし法人税課税はされる) |
個人資産 を増やすために意識すべきポイント
株式会社側(社長として)
利益を個人へ取り出す手段を計画する。
- 役員報酬の最適化
- 退職金積立(節税しつつ将来の資産形成)
- 配当金活用(金融資産への再投資)
- 法人名義での保険(解約返戻金の活用)
- 法人保有不動産(法人名義で保有し賃貸収入を得る、将来的に譲渡益)
出口戦略を考える。
- 株式譲渡によるキャピタルゲイン
- 事業承継税制の活用
- 個人資産保全(法人→個人資産移動の課税対策)
医療法人側(理事長として)
法人資産と個人資産をきっちり分ける
- 医療法人の利益は個人資産にならない
- 個人の役員報酬を適切に設定する(高すぎず低すぎず)
退職金制度の整備
- 医療法人でも退職金を支給可能
- 高額にすると否認リスクがあるため税理士と相談
余剰資金の活用は慎重に
- 節税保険などは規制が厳しい
- 医療法人の資産を個人へ移すスキームはほぼ不可能
不動産活用は慎重に
- 医療法人名義での不動産取得は行政の許認可が必要
- 個人名義の不動産を法人に賃貸する場合、賃料の妥当性に注意
子供に資産を残すために意識すべきポイント
株式会社の場合(社長として)
株式の承継計画を立てる
- 株式は譲渡・贈与が可能。
- 自社株の評価引き下げ(退職金支給、配当抑制、不動産移動など)で贈与税・相続税の負担を軽減できる。
- 事業承継税制を活用すれば、一定要件で相続税・贈与税が猶予または免除になる。
退職金や保険で資産を移す
- 退職金を受け取ることで、法人から個人へ資産を移す。
- 法人保険(逓増定期、養老保険など)を活用し、解約返戻金を退職金原資にする。
- 保険金受取人を子どもに設定する方法も検討。
法人所有不動産を活用
- 法人名義で取得した不動産を、将来売却または移転する計画を立てる。
- 個人や家族名義への賃貸を通じて、個人側へ所得移転するスキームもあり。
- 贈与税や相続税の評価を下げやすい不動産の活用は有効。
医療法人の場合(理事長として)
医療法人は非営利法人であり、法人財産を家族に残すことはできません。したがって、承継対策は「個人の取り分(報酬・退職金)」を最大限活用するしかないのが現実です。
一方、持ち分なし医療法人は相続財産から除外されるため、子供が医師の場合は税金を支払う必要なく医療法人をまるごと渡すことが可能です。ただし、子供が医師でない場合は不可能になるため、第三者に譲るか閉業となります。
田舎のクリニックの場合、患者さんに迷惑をかけてしまうため閉業は避けたいです。しかし、医療報酬がどんどん引き下げられてきているため、第三者で承継したい医師も少なく、継続は困難になってきています。
医療法人の承継手続き
- 医療法人自体を承継させるには、都道府県の認可が必要。
- 子どもを後継理事長にする場合も、理事会・社員総会の承認が必要。
- 法人内部の資産を個人へ移せるわけではないため、法人は法人で存続させるしかない。
両者共通で注意すべきこと
- 役員報酬を定期同額にすること(税務リスク回避)
- 事業承継対策を早期に準備する
- 法人の資産と個人の資産を混同しない
- 資産形成スキームは法規制や税制改正を常に確認する
私の場合
医療法人を父親から承継し、株式会社を自分で立ち上げました。
私は田舎のクリニックの医療法人の理事長を父親から引き継ぎ、自分のやりたいことを形にするために株式会社を立ち上げました。意識していることは下記で、家族や子供の状況にあわせて適切な手をうっていく必要があると考えています。
株式会社は
→ 利益を柔軟に個人へ移せるため、資産を増やす箱 として自由度が高いという特徴がある。
→ 節税スキームが豊富。
→ 子供に引き継ぎやすい。
医療法人は
→ 利益を個人に移せない。法人内部に留保するしかない。
→ 個人資産形成は給与・退職金を活用するしかない。
→ 子供が医師でない場合は引き継げない。一方、子供が医師である場合は、そのクリニックが利益を生んでいるならば、かなり有用。
苦労したこと
私が医療法人を承継した際、担当税理士事務所の力量不足でしかないと思いますが、退職金の原資がありませんでした。税制上の優遇を考えると家族の退職金は絶対に支払うべきであるため、私の代になり医療法人が多額の借金をする必要がありました。このようなことは子供には絶対にさせたくないと思います。
まとめ
株式会社と医療法人は、仕組みや税制、資産形成の方法に大きな違いがあります。何が正しい選択かは状況によって異なりますが、自分の目指すライフプランを明確にし、それに沿った対応をすることが大切です。今回の記事が「個人資産」を守り増やすヒントになれば幸いです。


